スマートカードメーカーA社開発部

仮想通貨カードの高セキュリティ化を実現最先端の認証カード開発に取り組むも、搭載する電池に問題が…

背景

ビットコインを皮切りに多種多様な仮想通貨(暗号通貨)の普及が世界中で進み、現金への換金サービスも増えたことで、仮想通貨利用者も増えつつある。その一方で、仮想通貨そのものは暗号データであるため、不正アクセスや不正使用が起こりやすいことから、より高度なセキュリティ管理のしくみやツールの開発が求められている。そこでA社では、高度なセキュリティ機能を備えたコールドウォレットとして仮想通貨用カードの開発に乗り出すことにした。

※インターネットなどのネットワークと切り離した状態で仮想通貨を保管するツールやデバイス

課題

課題は電池の容量不足と厚み

A社では、すでに指紋認証カードの開発を進めていましたが、仮想通貨用のカードには指紋認証に加え、スマホとのBLE通信認証やディスプレイ表示などの機能を搭載する必要があると考えました。
しかし、これらの機能をカード上で稼働させるためには、一次電池の搭載では容量不足だと判明します。指紋認証センサーの省エネタイプへの変更や、BLE通信の低消費電力化を模索しましたが、カードの寿命は少なくとも5年はないと実用化が難しいという判断から、二次電池搭載の検討を始めます。ここで電池の「厚み」が問題になりました。一般的なカードから考えると、内蔵できる二次電池の厚さは0.5mm以下が必須条件ですが、それでは容量が不十分で、搭載したい複数の機能が稼働しません。容量不足と厚みの2つをクリアする電池はなかなか見つからず検討はスムーズに進みませんでした。

電池自体が膨張するなど、さらなる問題も…

二次電池の選定が暗礁に乗り上げる中、搭載したい他の電子部品については選定が進んでいました。
しかし、指紋認証センサーやBLE通信モジュール、ディスプレイなどを搭載すると、二次電池用のスペースは想定以上に狭くなることが分かりました。高容量かつフットプリントの小さな電池で、充電頻度を増やせばひとまず問題は解決できそうですが、利用者の充電の手間を考えるとやはり実用化は難しいと判断。まだ見逃している電池があるかもしれないと、世界中からさまざまな薄型二次電池を集め、試作品を作りますが、どれもサイクル寿命が悪く、目標のカード寿命5年には到底届きません。それどころか、どの電池も劣化が進むにつれて電池自体が膨張し、カードが膨れ上がってしまいました。

課題のポイント

  • カードの高セキュリティ化には、指紋認証・BLE通信・ディスプレイ表示の機能が必要だが、一次電池では容量不足

  • 二次電池を検討するも、許容内の厚さのものは容量が小さく、容量不足を補えない

  • 複数の電子部品を搭載すると二次電池用のスペースは狭くなり、内蔵できる電池の大きさも限られる。電池の充電頻度を増やす方法はあるが、実用性に欠ける

  • 他の二次電池を使って試作品を作ったが、サイクル寿命が悪く、劣化が進行すると電池自体が膨張

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