ルネサスエレクトロニクス株式会社様

メンテナンスフリーの屋外空気質モニタリングシステムを実現太陽電池の電力は不安定で…

背景

地球規模で年々深刻になっている大気汚染問題※1。大気が健康へ悪影響を及ぼすことを防ぐための第一歩は、周囲の「空気質」※2を知ることにある。米国では環境保護庁(EPA)が、窒素酸化物やオゾン、一酸化炭素、PM2.5などの濃度をもとに、Air Quality Index(AQI)と呼ばれる指標で空気質を数値化し、主要都市のAQIを毎日観測、発表している※3。しかし、従来の空気質センシングシステムは消費電力が大きく、電源ケーブルの敷設や定期的な電池交換が必要で、設置できる場所が限られていた。

※1 2018年には世界保健機関が「屋外の大気汚染が原因で年間約360万人が早期死亡しているとみられる」と発表
※2 建物内などの空気中のガス成分量
※3 AirNow

課題

太陽電池からの電力を安定的に供給したい

大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、有害な屋外空気質の一因となるガスを測定する、ガスセンサIC(ZMOD4510)を提供してきました。これはオゾンや窒素酸化物をpptレベルで測定し、米国EPAのAQI基準を算出できるものです。
さらにルネサスではオゾンを選択的に計測する超低電力モードをサポートするZMOD4510と独自のSOTB™プロセス技術※4を使った超低消費電力「REマイコン」と組み合わせ、屋外空気質モニタリングシステム(AQM)を開発。太陽電池から得られる微弱な電力でAQIの常時測定が可能となりました。しかし、電源ケーブルや電池交換の手間が不要となるものの、曇りや雨天時などに太陽電池の発電量が変動すると、AQMの駆動が不安定になってしまうという課題がありました。太陽電池は電力を貯めておくことができないのです。

※4 SOTB™プロセス:SOI (Silicon on Insulator) を使用したルネサス独自のトランジスタ技術。SOTBはルネサスの米国およびその他の国における登録商標です

環境発電から得られた電力を一時的に貯める蓄電デバイスが欲しい

環境発電から得た電力を貯める蓄電デバイスとして、従来のキャパシタでは自己放電が大きく、貯めた電力を長期間保存することが困難です。また、一般的な二次電池では電力を長期間貯めておくことはできますが、抵抗が高いために出力が小さくAQMを駆動することができません。過酷な環境下でも使用でき、太陽電池からの微弱で不安定な電力を貯められ、長寿命でメンテナンスの手間がかからないことも必要です。これらすべての課題を解決する蓄電デバイスが求められていました。

課題のポイント

  • 環境発電は、天候の変化などにより発電量が変動してセンサシステムの駆動が不安定に

  • キャパシタは、自己放電が大きく、電力の長期間保存が難しい

  • 従来の二次電池は、AQMを駆動することができない、微弱な電力を貯められない、寿命が短い、大量のセンサシステムに実装する時の製造コストが高いという欠点がある

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